店頭でお客様とお話ししていると、面白い発見があります。
時計がお好きな方なのに、ロレックスを一本も持っていない。
実は、そんな方が意外と少なくありません。
ブライトリングが何本もある。
IWCもある。
オメガもある。
パネライまである。
それなのに、ロレックスだけはない。
もちろん予算の問題ではありません。
だからこそ、なんだか興味を惹かれるのです。

「嫌いじゃないんですけどね」
そんな方に理由を聞いてみると、だいたい最初に出てくる言葉があります。
「嫌いじゃないんですけどね」
そして続くのが、
「みんな持っているから」
「優等生すぎる気がして」
「良い時計なのはわかるんですけど、なぜか惹かれないんですよね」
という言葉です。
不思議ですよね。
ロレックスを否定しているわけではありません。
むしろ「すごい時計だと思います」とおっしゃる方のほうが多いくらいです。
それでも、自分のコレクションには入ってこない。
そこに、その人らしい価値観が見える気がします。
ロレックス好きには理解できない
一方で、ロレックスがお好きな方からすると、この感覚はなかなか理解できません。
「え? ロレックスいいじゃないですか」
「なんで持っていないんですか?」
そんな反応になることもあります。
もちろん、どちらが正しいという話ではありません。
ただ、お互いに少し不思議に感じている。
その温度差もまた面白いところです。
人は時計ではなく“空気感”を選んでいる
性能や品質の差かと言われると、そうでもない気がします。
ロレックスも素晴らしい。
オメガも素晴らしい。
ブライトリングもIWCも、それぞれに魅力があります。
では何が違うのか。
たぶん人は、時計そのものだけではなく、その時計が持つ空気感のようなものに惹かれているのだと思います。
「なんとなく好き」
「見ていると落ち着く」
「昔から憧れていた」
「自分らしい気がする」
時計選びには、そんな理屈では説明できない感覚が意外と大きく影響しています。
「良い時計」と「好きな時計」は違う
反対に、
「良い時計なのはわかるんですけどね」
「なぜか刺さらないんです」
「自分には似合わない気がして」
そんな言葉を聞くこともあります。
これもまた、その人にとって大切な感覚です。
良い時計だから好きになるとは限らない。
好きだから欲しくなる。
時計選びは、案外そんなものなのかもしれません。
持っている時計より、持っていない時計
そしてこれは、ロレックスに限った話ではありません。
オメガを選ばない人もいますし、ブライトリングに縁を感じない人もいます。
それぞれに「なぜかわからないけれど選ばないブランド」があります。
長く時計に携わっていると、何が好きかよりも、何をなぜか選ばないのか。
そのほうが、その人らしさが見えてくる気がします。
だから私は、お客様のコレクションを見せていただくとき、何を持っているかと同じくらい、何を持っていないのかも気になります。
そこには、その人だけの価値観や美意識が隠れているような気がするのです。


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