リューズについて

オーバーホール料金を抑えるために、日常の中で特に気をつけたいのが「リューズ」です。リューズのネジ山が破損している場合、修理代が高額になることが多いのです。
リューズの破損の有無は、実はご自宅でも簡単にチェックできます。

リューズのチェック方法

王冠マークの向きに注目して動画をご覧ください。1回転半回らずにリューズが飛び出てしまいます。こうなってしまうと、リューズのねじ山が短くなりすぎており、リューズの交換が必要になります。
また、症状によってはメーカーへの修理ご依頼をお勧めすることもあります。


リューズ破損の3つの原因

ネジ込み式リューズを強く絞め過ぎることによるネジ山の破損

ネジ込み式リューズを間違った角度で締めた事によるネジ山の潰れ

リューズの腐食

ここからは、リューズを破損から守るために、3つの原因別にその対策を解説していきます。

ネジ込み式リューズを強く絞め過ぎることによるネジ山の破損

ロレックスやオメガ シーマスター等、防水性の高い時計に多く見られる「ねじ込み式リューズ」。文字通りリューズの内側にネジ山があり、それを締めることでロックする構造になっています。この構造では、リューズを強く締めすぎることでネジ山が破損するケースが少なくありません。
防ぐ方法は「きちんと締める。それ以上締めない」これだけです。きちんと締まっていれば、あとはリューズ内部にあるゴムパッキンが水の浸入を防いでくれます。

ネジ込み式リューズを間違った角度で締めたことによるネジ山の潰れ

ねじ込み式リューズは、時計側に付いている「チューブ」と呼ばれるパーツにネジでロックする構造になっています。リューズとチューブのネジ溝は、とても小さく繊細です。間違った角度で締めてしまうと、確実にネジ山を傷めてしまいます。リューズを締める際、少しでも引っ掛かり等の「違和感」を感じたら、無理せずやり直すようにしてください。ちなみに、新品でご購入から10年程度までの時計でリューズが破損している場合、こちらの原因が最も多くなっています。

リューズ(右)とチューブ(左)

リューズの腐食

リューズとチューブの材質である「ステンレス」。ステンレスはさびないというイメージがあると思いますが、実は汗が原因となりさびることがあります。
ステンレスは空気に触れているときは、表面に酸化被膜ができ腐食しません。 しかし、汗に含まれる脂分が付着すると、ステンレス表面が空気と遮断されるため酸化被膜ができなくなり、腐食してしまうのです。
その化学変化は、リューズの内側、クロノグラフのボタンの内側などに溜まった汚れや汗により、確実に起こっています。汗の量が多い方、あるいは夏のご使用頻度の高い方は注意が必要です。
オーバーホール時にはリューズやボタンの内側も洗浄するため、脂分は除去されます。脂分が除去されたステンレスは、表面に酸化被膜ができ、再び腐食しない金属に戻ります。この状態に一時的にでも戻すことが、ステンレス製のリューズやボタンを長持ちさせます。これが定期的なオーバーホールをお勧めする大きな理由の一つです。

ねじ込み式リューズの
構造

ねじ込み式リューズは、実はネジによるロックで防水性を保っているのではなく、内部のゴムパッキンによって高い防水性を実現しています。強く締めすぎるとゴムパッキンの潰れの原因にもなります。そのため、リューズのねじ込みは、必要最低限でいいのです。

ねじ込み式リューズの構造

ゴムパッキンの重要性

水や汗はリューズ内部の水色の部分まで浸入しますが、通常リューズの一番上の位置にあるゴムパッキンが時計内に水が浸入するのを防いでくれます。しかし、ゴムパッキンが劣化すると時計内に水分が浸入し、リューズ内側に汗の脂分が残ってしまうのです。

ゴムパッキンの重要性

ゴムパッキンは
劣化します

ゴムパッキンは気づかぬうちに劣化しています。ゴムパッキンが有効なのは最大5年までと言われています。
ゴムパッキンが劣化すると時計を水につけなくても、汗が内部に入ります。これで内部部品にサビが出てしまいます。時計内部を守る生命線ともいえるゴムパッキンを良い状態に保っておくために、オーバーホールは5年以内(理想は3年周期)に行うことをお勧めします。

リューズ(上)とゴムパッキン(下)