高級腕時計業界に広がるサステナブルな動き

2015年に国際連合が提唱したSDGs（持続可能な開発目標）から始まり、近年では優れた製品を永く使い続ける考え方が重要視され、環境保護につながる製品や取り組みが続々と登場しています。とりわけ機械式腕時計は電池が要らず、定期メンテナンスを施すことによって半永久的に使い続けられるため、未来を見据えた製品と言っても過言ではありません。

これまでの時計業界におけるSDGsへの取り組みといえば、環境団体への寄付がメインでした。しかし、高級腕時計本体は貴金属に依存した贅沢品であり、“自然環境に配慮した製品” とは言い切れません。そこで、エコな新素材の開発や、リサイクル素材を使用しながら高級感を確立させるモデルの発表が積極的に行われるようになりました。

例えばオメガやカルティエは、貴金属や宝石を入手するための行動規範 “RJC” ( Responsible Jewellery Council ) の実務基準を満たしています。（※RJCとは……金やプラチナのような金属を扱う宝飾品業において、環境的慣行を推進する国際的な非営利団体。責任あるジュエリー生産に則しているかを確認するため、RJC独自の監査とレビューが実施され、基準をクリアした企業は認定を取得できます。）

ほかにも、サステナビリティレポートの発表や、リサイクルパッケージの採用といった取り組みが各社で行われるようになりました。しかし、このような疑問が思い浮かぶ方も少なくないでしょう。

“金属・石・革を使用した腕時計を着用することが、環境に配慮した行動と言い切れるのだろうか”
“SDGsやサステナブルが、高級腕時計に通用するのか”
“サステナブルとは対極なのでは”

じつは、時計の素材にもSDGsの思想が取り入れられつつあります。

腕時計でSDGsを取り入れたい方へおすすめのブランド “パネライ”

パネライは、世界初の自動巻き時計を開発したイタリアの時計ブランド。新技術のパイオニアとして名高く、近年話題の “サステナブル” や ”エシカル” にちなんだ開発にも取り組んでいます。

例えば、2021年の新作として発表された “ルミノール マリーナ eSteel” は、従来のルミノール マリーナがeスティール素材でつくられたモデル。時計総重量の58.4％が再生ステンレススチールで作られています。

2021年4月には、時計全体重量の98.6％がリサイクル素材のコンセプトウォッチ “サブマーシブル eLAB-ID” を発表しました。パネライ史上、最もリサイクル素材の割合が高い時計です。

ムーブメントにはリサイクルゴールド製のローターを搭載し、心臓部である脱進機にもリサイクルシリコンを使用。ほかにも、不良品として弾かれた文字盤から再利用された夜光塗料のスーパールミノバ、リサイクルされたホワイトゴールドの針、エコチタンのケース、再生PET製ファブリックストラップが装備されています。

世界限定30本で、価格は799万400円と、パネライのコレクションのなかでも特に高価で入手困難。しかし、環境へ配慮した製造方法は主力ラインナップにも同様に採用されています。

2022年の新作として発表されたサブマーシブルコレクションでは、新素材 “eスティール™” が使用されるように。時計総重量の52％を占める同素材は、リサイクル素材から作られた高品質のステンレススティールです。

このようなアップサイクルに果敢に挑むパネライですが、時計のサステナビリティを高めるノウハウを独占しようとせず、業界他社と共有するために製法や関係各社をすべて開示しています。他社でも同素材が使えるように準備されている姿勢が、非常に魅力的なブランドです。

持続可能な腕時計にはオーバーホールがマスト

新たな局面に差し掛かった今でも、機械式腕時計の本質は “精密な技術を必要とする機械構造の美しさ” そして “機械構造が時刻を正確に測定する能力” に変わりありません。時代の進化とともに魅力を高めつつ、持続的なメンテナンス体制を構築することが、今後の時計業界に求められる課題であると考えます。

カナルクラブは、御徒町で50年以上続く、高級腕時計専門の修理工房です。経験豊富で腕のいい技術者が、責任を持ってお客様の時計をオーバーホールいたします。機械式腕時計の定期メンテナンスやオーバーホールは、年間7000件の修理実績を誇るカナルクラブにお任せください。高度な技術を、適正価格でご提供いたします。