ロレックスにも、本気でクォーツを作っていた時代がありました
機械式時計がお好きな方とお話ししていると、「クォーツはあまり興味がなくて……」という声を聞くことがあります。現在のロレックスといえば、機械式時計のイメージが強いため、そう感じるのも自然なことかもしれません。ですが時計の歴史を少し振り返ると、ロレックスにもクォーツ時計を本気で開発していた時代がありました。
その代表的なモデルが、オイスタークォーツです。(Ref.17000, 17013, 17014)
ロレックスのクォーツモデルは1977年〜2000年頃まで製造されました。
「ロレックスにクォーツがあったんですか?」
店頭でも、この言葉を耳にすることがあります。現在では生産が終了しているため、実物を見る機会は多くありません。初めて見る方は、そのケースデザインにも驚かれることがあります。現在のデイトジャストとは少し雰囲気が違い、直線的でシャープなフォルム。
1970年代らしい「未来」を感じさせるデザインです。当時の時計業界全体が、新しい技術への期待に満ちていたことが伝わってきます。
裏蓋を開けると、さらに驚きます
オイスタークォーツが興味深いのは、外観だけではありません。裏蓋を開けてムーブメントを見ると、もう一つ驚くことがあります。ムーブメントの外観も、一見すると機械式時計のムーブメントのように見えるのです。一般的なクォーツムーブメントを見慣れている方ほど、その印象の違いに気付かれるかもしれません。もちろん、水晶振動子と電子回路によって制御されるクォーツ時計です。しかし、その設計思想は一般的なクォーツとは少し違いました。ロレックスは、アンクル(レバー)やガンギ車(エスケープホイール)を組み込んだ独自の構造を採用しています。そのため、ムーブメント全体から受ける印象も、どこか機械式時計を思わせるものになっています。

一般的なクォーツとの違い
一般的なクォーツ時計は、比較的シンプルな構造になっています。
一般的なクォーツ時計
水晶振動子 ⇨ IC(電子回路) ⇨ ステッピングモーター ⇨ 輪列 ⇨ 針
ロレックス オイスタークォーツ
水晶振動子 ⇨ IC(電子回路) ⇨ ステッピングモーター ⇨ アンクル(レバー) ⇨ ガンギ車(エスケープホイール)輪列 ⇨ 針
もちろん、この図は仕組みを分かりやすく表現したイメージですが、「一般的なクォーツとは考え方が違う」ということは伝わるのではないでしょうか。
「ロレックスらしいクォーツ」を目指した
もし精度だけを追求するのであれば、もっとシンプルな構造も選べたはずです。それでもロレックスは、この独自の構造を採用しました。その姿勢を見ていると、「クォーツ時計を作る」というより、「ロレックスらしい時計をクォーツで表現する」ことを目指していたようにも感じられます。
ブランドの個性は、機械式かクォーツかだけでは決まらない。そんなことを、この時計は教えてくれるような気がします。
古い時計には、その時代の挑戦が残っています
私たちは修理を通して、さまざまな年代の時計に触れる機会があります。古いクォーツ時計を分解していると、「昔の時計だから」というより、「この時代の技術者は、何を目指していたのだろう」そんなことを考えることがあります。オイスタークォーツも、その一本です。現在では機械式時計のイメージが強いロレックスですが、その歴史の中には、クォーツという新しい技術に真剣に向き合った時代が確かにありました。そのことを知ると、今のロレックスも少し違って見えてくるかもしれません。
同じカテゴリの記事






