
腕時計には、文字盤や時計内部の部品を保護する「風防」が必ず備えられています。風防とは、風による影響を防ぐために備えられた部品です。言葉自体は時計専門用語ではなく、バイクや自動車にも用いられています。
基本的に腕時計の風防に使われているのは、サファイアガラス・ミネラルガラス・プラスチック風防の3種類です。現在では、硬度の高いサファイアガラスが主流とされ、多くの高級時計に用いられています。
サファイアガラスは天然宝石のサファイアと同等の硬度を誇り、傷がつきにくのが特徴的です。ミネラルガラスと比較して高価であるため、高級腕時計に使用されます。
プラスチック風防は、名前のとおりプラスチックで作られた風防です。安価で加工しやすい素材として使用されていましたが、次第にガラス製の風防が普及したため、プラスチック風防が使用された高級時計は徐々に減っていきました。
しかし、プラスチック風防には、現代でも通用する数々のメリットが存在します。そのため、現在でもオメガ スピードマスターやパネライ ルミノールなどの現行モデルには、プラスチック風防が採用されています。
プラスチック風防の特性
– 透明性・視認性が高い
プラスチック風防は反射が少なく、光の透過性が高いです。また、指紋が目立ちづらい特徴も相まって、文字盤の視認性を高めています。
– 粘性・弾力性がある
サファイアガラスの時計(オメガのシーマスターやスピードマスター、ロレックスのデイトジャストなど)のオーナ-様から「時計を落とした衝撃でサファイアガラスが割れた」と修理にお持ち込みいただくケースがあります。
「サファイアガラスは割れない」と思われる方もいらっしゃいますが、決してそうとは限りません。ダイヤモンドと同じく、硬度の高い物質のため傷はつきにくいですが、衝撃が加われば割れてしまいます。また、ガラスの風防は割れると破片が鋭くなるため、破損時の扱いには十分な注意が必要です。
一方のプラスチック風防では、傷はつきやすいものの、案外割れにくい特徴を持ちます。文字盤が負傷する機会を減らせるため、時計の価値をより維持しやすく、割れた際も危険が少なく安心です。
– 傷を取り除くことができる
サファイヤガラスは硬度が高く傷が付きにくい反面、傷がついてしまった場合は取り除くことが難しい傷を取り除きたい場合は、ガラスを交換しなければならず、高額な費用が発生します。
プラスチック風防の場合、傷は付きやすいものの、ポリッシュで取り除けるというメリットがあります。
とは言え、ポリッシュを頻繁に行えば部品が痩せ細ります。細かな傷であれば、使い込まれた個体ならではの雰囲気として楽しむことも視野に入れてみましょう。
– ドーム型の形状が個性的
ガラスは硬く、加工が難しいため、表面が平らな形状をしています。一方、プラスチック風防は、強度を上げるためにカーブを描いたドーム型の形状をしている場合が多いです。
アンティークウォッチの象徴、そして愛着を湧かせる一つの要因とも言え、独特の形状や雰囲気を好むコレクターが多くいます。
風防のメンテナンスもカナルクラブへお任せください
プラスチック風防は、アンティークらしさや使い込んできた年季を感じられる魅力的な部品です。サファイヤガラスやミネラルガラスとは異なる味わいがあり、アンティークウォッチに興味がある人のみならず、個性を重視する方にぴったりと言えるでしょう。時計を扱われる際には、ぜひ風防にも注目してみてください。
サファイアガラスは、衝撃さえ与えなければ半永久的に変質しませんが、プラスチック風防は数十年で劣化します。文字盤に無数のヒビが入り、白く変色して視認性が低くなった時計をお預かりするケースも少なくありません。時計の視認性・安全性・価値を維持するためにも、定期的にメンテナンスを依頼されることをおすすめします。
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こちらのコラムでは主に初めてオーバーホールする方に向けてぜひ知っておいていただきたいことを書いています。
カナルクラブではオーバーホールの大切さを知っていただき、大切な腕時計の価値を長持ちさせていただきたいと思っております。
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