時計を手放す瞬間、心のどこかで時間がふっと動き出す
最初はただ、本当に「整理するつもり」だったのだと思います。
棚に静かに並んでいる時計を眺めながら、「最近つけてないなぁ」なんて、軽い気持ちで箱を開けただけ。
でも、金属のひんやりした感触に触れた瞬間、あの頃の朝の空気や、仕事前にふと時間を確かめたあの緊張感、誰かの言葉に救われた夜の気配まで、小さく息を吹き返すように戻ってくることがあります。時計って、記憶の再生ボタンみたいなところがありますよね。
「売るつもりなんてなかったんですけど……」そうおっしゃる方が多いのは、この“よみがえり現象”のせいかもしれません。もちろん、その一方で心のどこかでは「いくらくらいなんだろう?」
という現実的な好奇心も動き出す。そこは否定できません。査定に出して、数字を見て、「なるほど……」と冷静に頷いているのに、帰り道でなぜか胸の奥が少しだけざわつく。これ、よくあります。
手放すと決意した瞬間ほど、なぜか時計が少しだけ“良く見える”のも不思議です。
まるで最後の抵抗みたいに、急に魅力を増すんですよね。
それでも、手放すという決断が苦いだけかと言えば、そうでもありません。
時計はただ離れていくのではなく、“誰かの新しい時間”を刻む未来へ向かっていく。そう思うと、少しだけ肩の力が抜ける瞬間もあります。でも、やっぱり本音を言えばこうです。
売らないほうが、あとで後悔しないことが多いですよ。
……と、声を大にしては言いませんけれど。
(Canal Clubとしては、もちろんどちらでも構いませんよ?
ただし、個人的にはちょっと、ほんのちょっと、そう思うだけです。)
あなたにも“売るつもりなんてなかった一本”がありますか?
もしあれば、その時計がくれた時間を、そっと思い返してみてもいいかもしれません。
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