修理から戻った時計は、過去の自分まで連れて帰ってくる
修理に出した時計が戻ってくる日。ただの荷物の受け取りなのに、
なぜか胸の奥が少しそわそわすることがあります。箱を開けると、新品ではないのに“新品みたいな空気”がふっと漂う。あの瞬間って、不思議ですよね。

磨かれたケース、軽く息を吹き返したような針の動き、リズムが整ったテンプの鼓動。
思わず「おかえり~」って言葉をする方もいらっしゃいます。
でも本当に戻ってくるのは、時計そのものよりも “その時計と一緒に過ごした時間” の方なんです。仕事で緊張した日の汗ばむ手首の感覚とか、休日にコーヒーを飲みながら、針の影をぼんやり眺めていた朝とか。どれも微妙に忘れていたのに、時計を見るだけでふっと蘇ってくる。時計とは本当に、小さな記憶装置みたいな存在です。
「新しいのを買うより、戻ってきた一本のほうが落ち着く」
そんな声を聞くことも多いのですが、それは“記憶のオーバーホール”が行われたからなのかもしれません。
たとえば──長く使ってきたことでついた小さな傷。
ブレスレットの微妙な歪み。
以前は「気になるなぁ」と思っていたその部分が、
戻ってきたあとは、まるで親しみの証のように見える。

Watchmaker is repairing the mechanical watches in his workshop
修理後に時計を腕に巻いたとき、針の音よりも先に、自分の中の“何か”がまた動き出す。
それがこの現象の正体です。時計はただの機械じゃなくて、あなたの人生の温度に触れてきた存在。
だから戻ってきた一本は、
“直った時計”ではなく、
“戻ってきた時間” なんだと思います。
あなたにも、そんな愛着のある時計はありますか?
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