買う、迷う、飽きる、そしてまた好きになる
「時計は一本で十分ですよ」
──昨日のあなたは、確かにそう言っていました。
ええ、本気で言っていたと思います。
でも翌日になると、人の心は静かに裏切ってくるんですよね。
「……いや、もう一本あってもいいのでは?」
といった感じに・・・時計好きにとって、あれは“幻聴”ではなく“本能”です。

買う理由を探しはじめた時点で、もう旅は始まっている
検索履歴に「黒・青・白 文字盤」「Ref.調べ方」「並行差」などの謎の単語が並びはじめたら、
それはは立派なスタートの合図です。時計選びにおける最大の幸福は、
“まだ買っていない時間” にあります。時計を探しいる時、とても楽しいですよね。
「次はこれかな」
「いや、あっちかも」
と迷っているとき、脳内のドーパミンは静かに全力投球しています。
SNSで見た一本が、急に“自分の時計”の顔をする
現代のSNの力は最強です。3秒前まで見知らぬ時計だったのに、
突然「自分の未来に必要な一本」に見えてくる。すごく気になりはじめたら、ずっと追い続けてしまう。似た時計をすでに持っていても関係ありません。
なぜか“別物”に見えてくるんです。
現実は静かに訪れる(そして少し笑える)
「電池交換だけで済むかと思ってまして……。」 「オーバーホールだけで済むといいな・・・」
とおっしゃる方は少なくありません。
時計とは、油断するとこちらの想定を少し越えてくる生き物です。
ただ、それも含めての魅力なんですよね。
そして、人の時計が妙に気になりだすのは、
自分の時計に少し“飽きた”サイン。
誰にでもあります。
気にする必要はありません。
むしろ、それは“次の一手”の準備段階です。
オーバーホール後、自分のほうが整っている
「時計が軽くなった気がする」
という声よりも、
「自分の気持ちのほうが軽くなった」
という声のほうが多いんです。
時計の整備は、
なぜか気持ちの整備にもなるんでしょうね。
気づけば、
時間ではなく“音”に集中している瞬間がある。
カチ、カチと響く音に耳が吸い寄せられ、
自然と手首が時計を優しく扱い始める。
夜の静けさは、時計を少しだけ育ててくれます。
「この一本で十分」は、一日の賞味期限
時計選びで人が動くのは、理屈でも市場でもなく、“記憶”です。
黒文字盤を選ばなかった後悔が長く続いたり、
“売るか残すか”で性格が滲み出たり。
そして結局のところ、
最終的に手元に残るのは一本の時計ではなく、
その時計を持っていた時代の自分 なんですよね。
だからこそ、時計はモノであってモノ以上。
手首に巻く、小さな“時間の断片”です。
あなたへの問い
昨日の「この一本で十分」は、今日のあなたにとって、まだ有効でしょうか?
それとも、新しい何かが静かに扉を叩いていますか?
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