イタリア人アンティーク商の信念
数年前にロレックスデイデイトK18イエローゴールドを「オーバーホールして欲しい、ただし部品交換一切なしで」という依頼がありました。しかし、このロレックスは止まっているし、見た目もかなりダメージを予感させるものでした。このロレックスデイデイトは動かなかったので最低でもゼンマイ交換くらいは必要なのですが、それでも「部品交換はしないように」とおっしゃいます。私はこのお客さんは、修理代を安く抑えようとしていると思いました。
実はイタリア人アンティーク商から買ったものらしいのですが、そのイタリア人は部品を交換すると価値が下がるので交換してはいけないと言ったそうです。しかし部品の破損があるときは、やはり部品交換は必要です。破損した部品は交換しないと時計は動きません。
イタリア人アンティーク商の方もそんな無理は言わないと思うのですが、言い間違いか、聞き間違いか・・・。ただこの話にはひとつ共感してしまう部分があります。それはできるだけ部品を守る、ということです。
カナルクラブのブログの“日常のメンテナンス”を読んでいただいている方はお分かりいただいているかと思いますが、時計の汚れはただの汚れではなく時計を傷めてしまうと言うことです。だから汚れは定期メンテナンスで落とし、もちろん内部も整え、ケースやブレスレットのキズは年輪として感じる。
いつもピカピカであってほしいという気持ちももちろんわかりますが、年輪を感じるというのも高級時計ならではの趣味でしょう。