スマートフォンやノートPC、ワイヤレスイヤホンなど、現代生活には磁石を内蔵した製品が多く存在します。
腕時計はこうした磁気の影響を受けやすく、突然の「大幅な進み」や「動作不良」の背後に“磁気帯び”が関係しているケースは少なくありません。
ここでは、磁気帯びの仕組み・チェック方法・原因・対処・予防・オーバーホールとの関係を体系的に解説します。
【磁気帯びとは?──ゼンマイやヒゲゼンマイに起きる現象】
機械式時計の心臓部であるテンプとヒゲゼンマイは、薄く繊細な金属バネで構成されています。
このヒゲゼンマイが強い磁界に触れると、コイル同士が引き寄せ合い、伸縮のリズムが乱れます。
結果として:
- 著しい進み(+数分〜数十分/日)
- 止まりやすさの増加
- まれに“遅れ”が発生する場合もある
といった症状が現れます。
<クオーツ時計の場合>
クオーツでは内部の“ステップモーター”(秒針を1秒ごとに駆動するモーター)が磁気の影響を受け、
秒針の動きが乱れたり、一時的に停止したりすることがあります。
(イメージ:メトロノームの振り子の近くに磁石を当てるとリズムが崩れる、あの状態です。)
【こんな症状は要注意──セルフチェックのポイント】
- 急に大幅に進む/日差が極端に変わる
例:普段+10秒/日 → 突然+5分/日 など。 - 置き方・向きで進み具合が変わる
磁化の仕方によって、置姿勢で症状が強まることがあります。 - クオーツで秒針の動きが不規則になる/止まる
- 消磁(後述)を行うと症状が一時的に改善
※ 同じ精度不良でも油切れ・汚れ・防水不良など別要因もありますが、磁気帯びは“疑う優先度が高い”症状です。
【主な原因と“身の回りの磁界”リスト】
時計の帯磁は、距離 と 接触時間 が大きく影響します。
特に注意したいもの:
- スマートフォン・タブレットの磁気フラップケース
- ワイヤレスイヤホンの充電ケース、スピーカー、マグネット式充電端子
- ノートPCのスピーカー周り、タブレットのペン収納部
- バッグのマグネット留め具、冷蔵庫のマグネット
- マグネット内蔵の工具(電ドラ、スナップオンのマグネットトレー等)
- 電磁調理器(IH)・家電のモーター部
強い磁石に数センチ以内で、分〜時間単位近づけると帯磁リスクが急上昇します。
【対処法①:消磁でリセット(短時間・低負担のメンテ)】
専用の消磁器を使い、磁気をニュートラルに戻す方法です。
数秒〜1分で完了し、部品交換も不要です。
ただし——
「消磁は症状リセットであり、根本原因の除去ではありません。」
油劣化・摩耗・ヒゲゼンマイの変形など、別原因がある場合は再発します。
【対処法②:オーバーホールが必要なケース】
- 消磁しても日差が安定しない/すぐ元に戻る
→ 油の劣化、摩耗、ヒゲの偏心・歪みなど“根本の整備”が必要。 - 購入・前回のメンテから3〜5年以上経過している
→ 磁気帯びはあくまで不調のきっかけ(最後の一押し)であり、内部の油切れや汚れが根本原因である場合が多いためです。
オーバーホールでは、分解洗浄・注油・摩耗部品交換・防水テスト・歩度調整まで一体で行うため、再発抑止につながります。
【予防策:今日からできる「磁気帯び回避」のコツ】
- 就寝時はスマホから離して置く(30cm以上を目安)
- バッグのマグネット留め具側にダイレクトに当てない
- 作業時(スピーカー近辺・工具使用時)は外す
- 保管は金属棚・スピーカーの上を避ける
- 定期点検で“軽度の帯磁”を見つけて早めに消磁
砂鉄が磁石に吸い寄せられるように、時計内部の金属部品も磁力に敏感です。
身の回りの環境を整えることが、精度を保つ最も確実な方法です。
まとめ──“磁気”を知れば時計は長持ちする
磁気帯びは「急な進み/動作不安定」の代表的原因。
まずは「消磁+歩度測定」、根本整備が必要ならオーバーホールへ。
予防の鍵は「近さ×時間」のコントロールと定期点検。 環境と整備の両輪で、大切な一本を本来の精度と寿命へ導けます。
カナルクラブは御徒町で50年にわたり高級時計専門で修理を行っている実績があります。部品交換には純正部品を使用し、数十万という時計修理を手がけてきた経験豊富で腕のいい技術者達が、責任を持ってお客様の時計をオーバーホールいたします。
定期メンテナンス、オーバーホールは高度な技術力と適正価格のカナルクラブにお任せください。
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こちらのコラムでは主に初めてオーバーホールする方に向けてぜひ知っておいていただきたいことを書いています。
カナルクラブではオーバーホールの大切さを知っていただき、大切な腕時計の価値を長持ちさせていただきたいと思っております。
ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。




