腕時計のオーバーホールにおける注油

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油は時計を使用しなくても劣化する

腕時計は精密機械であるため、定期的にメンテナンスをしなければ故障や不具合がおこります。
そのため、メンテンナンスのために、オーバーホール作業を行います。

まず、オーバーホールとは、分解掃除、つまりオーバーホールで

部品を洗浄して綺麗にしたあとで、部品を組み立てていく際に

注油をします。

しかしパーツの動きがスムーズになるようにオイルを注すのですが、

その油は3、4年ほどで変質してしまいます。
変質したまま使い続けると乾いたり汚れたりして変質が進行し、油切れの状態となってしまうのです。
その状態で放置すると精度不良が起きて動作に異常が発生し、パーツそのものが摩耗していく原因となるため、オイルが変質するタイミングで差し替えが必要になります。

注油には熟練が必要

注油作業は細い針のようなオイラー(oiler)

と呼ばれる専用工具を使って行います。
必要な箇所に適量を注すのが重要なポイントです。
オイルが少なければ動かないことや、逆に多すぎると流れ出して精度が狂って歯車の動きを止めてしまう恐れがあります。

つまりある程度、オイルを注す箇所、量、手順は決まっていますが、状況に応じた適量の判断は知識と経験のある職人しかできません。

(もう一つ言うと、腕の良い先輩の注油状態を何度も見せられた経験も重要です)

例えば穴石やアンクルに注油する場合、油が多すぎても、少なすぎても

良い注油技術とは言えません。

それではどのくらいの量を注油するかというと、”適量”ということになります。

それ以外に表現の方法がありません。

つまりこのあたりも時計修理技術の難しいところですね。

暗黙知ということですから。

また、腕時計のパーツは小さくて細かいものばかりであるため、ルーペや顕微鏡を使って繊細な作業をしていく必要があります。

新米技術者は時計を分解して、その後組み立てることができるようになると

達成感を感じると思いますが、それだけではまだまだなのです。

これが時計の技術者で20代の人が少ない理由です。

(時計修理技術は”そこそこ”になるまでに10年かかると言われています)

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こちらのコラムでは主に初めてオーバーホールする方に向けてぜひ知っておいていただきたいことを書いています。

カナルクラブではオーバーホールの大切さを知っていただき、大切な腕時計の価値を長持ちさせていただきたいと思っております。

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