
軽さがもたらす、新たな高級時計の価値観
かつてはプロ仕様のダイバーズウォッチなど、限られた用途に使われていたチタン素材。しかし2020年代に入り、その優れた実用性と快適性から、数多くの高級時計ブランドがチタンを採用するようになりました。
「軽さ=安っぽい」というかつての常識は過去のものとなり、「軽くて上質」な素材として新たな評価を獲得しています。
なぜ今チタンなのか?素材としての魅力
チタンはステンレスに比べて約40%軽く、しかも高強度・高耐食性を誇ります。加えて、金属アレルギーを起こしにくい生体適合性もあり、長時間の装着でも肌に優しい点が特徴です。
以前は「傷がつきやすい」「加工が難しい」といった理由で敬遠されがちでしたが、近年では材料工学の進歩により、時計業界での本格採用が進んでいます。ステンレスに匹敵する美しさと高級感を備える仕上げが可能となり、高級時計の素材として脚光を浴びています。
チタン採用ブランドの動き
■ ロレックス
2022年に初のオールチタンモデル「ディープシーチャレンジ」、2023年には「ヨットマスター42」を発表。従来のステンレスにはない軽快さと特別な素材感が注目されています。とくに「ヨットマスター42」に採用されたRLXチタンは、ロレックスが独自に開発したチタン合金で、軽さと高い耐久性、そしてマットな質感を兼ね備えています。
■ オメガ
2019年に「シーマスター アクアテラ ウルトラライト」という、重さ約55グラムのガンマチタンを採用したスポーツウォッチが誕生。その後は「ウルトラディープ」や「No Time To Die」仕様モデルなどでもチタンを活用し、軽さと耐久性を両立しています。
■ チューダー(チュードル)
2012年の初代「ペラゴス」以来、チタン素材を継続採用。2022年には39mmサイズの「ペラゴス39」も登場し、日常使いにも適したチタン時計の定番として高い評価を得ています。
チタン素材のケアと注意点
実用性が高く耐久性にも優れるチタン素材ですが、使い方によっては美観や性能に影響が出る場合もあります。
■ 傷つきやすい鏡面仕上げに注意
チタンは硬度が高い一方で、表面の仕上げによっては研磨が困難な場合もあります。
特にポリッシュ仕上げのチタンは傷が目立ちやすく、再仕上げにも限界があるため、ぶつけたり擦れたりしないように丁寧に扱うことが大切です。
■ 硬化コーティングは研磨NGの場合も
表面処理されたチタンは、研磨によって加工層が落ちてしまうことがあるため、自己判断での磨きは避けましょう。
また、メンテナンス時には加工内容を理解したうえでの対応が求められるため、信頼できる時計専門店に相談しましょう。
■ 使用後は布で軽く拭いて清潔に
チタンはサビにくい素材ですが、汚れや皮脂が残ったままだとくもりや変色の原因になることがあります。
使用後は柔らかい布で汗や汚れを拭き取り、湿気の多い場所での長期保管は避けましょう。
■ 専門知識のある修理店へ相談を
チタン特有の構造に対応できる技術者に任せると安心です。
特殊な構造や加工が施されている場合もあるため、信頼できる時計専門店に相談しましょう。
チタン時計を長く使うために
チタンモデルを長く快適に使い続けるためには、日常の取り扱いや定期的なメンテナンスが欠かせません。
当店カナルクラブでは、ロレックスやオメガなどチタン素材の腕時計にも対応した修理・オーバーホールを承っております。素材の特性を理解した職人が、一点一点丁寧に仕上げます。
軽くて上質なチタン時計の魅力を、いつまでも安心して楽しめるように──ぜひお気軽にご相談ください。
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こちらのコラムでは主に初めてオーバーホールする方に向けてぜひ知っておいていただきたいことを書いています。
カナルクラブではオーバーホールの大切さを知っていただき、大切な腕時計の価値を長持ちさせていただきたいと思っております。
ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。