トゥールビヨンは、ミニッツリピーターや永久カレンダーに並ぶ、世界三大複雑機構の一つとして知られています。技術の進化により、必ずしも複雑なトゥールビヨン機構を搭載する必要はなくなりましたが、メンテナンスや修理時には非常に高度な技能と専門知識が不可欠です。
トゥールビヨン誕生の背景
1795年、伝説的な時計職人アブラアム=ルイ・ブレゲがトゥールビヨンを発明しました。トゥールビヨン誕生の背景は、機械式時計の常に課題とされてきた精度向上への追求にあります。誕生した当時、腕時計は一般的ではなく、トゥールビヨンの発明は主に懐中時計に応用されました。
懐中時計は通常、ポケット内で垂直に保持されるため、ムーブメントの重力への影響が問題とされていたのです。脱進機やヒゲゼンマイなどの繊細な部品は、“姿勢差(時計の向きやポジションの変化によりムーブメントにかかる重力の方向の変化による誤差)”に影響されやすく、数秒から数十秒の誤差が生じることが珍しくありませんでした。
この姿勢差を解消するために開発されたのがトゥールビヨンです。
トゥールビヨンの役割と仕組み
トゥールビヨンの主な役割は、時計の精度を向上させることです。従来の機械式時計では、姿勢変化による誤差が生じることがありました。とくに腕時計のように常に姿勢が変わる場合、懐中時計よりも姿勢差の矯正が必要とされ、ムーブメントにかかる重力の影響が精度に影響を及ぼします。
トゥールビヨンの仕組みは、重力による影響を時計自体が自己補正する特殊なメカニズムです。通常の機械式時計では脱進機とテンプは固定された状態で動作しますが、トゥールビヨンではケージと呼ばれる構造を使用して脱進機とテンプを保護し、ケージ全体を60秒ごとに一回転させることで重力の影響を均等に分散します。これにより、精度の向上が図られます。
トゥールビヨンの機構は多くの微細な部品で構成され、組み立てには高度な技能と専門的な知識が必要です。さらに、トゥールビヨンは一般的に高価であり、その高度な製造プロセスと希少性から高級時計の中でも特に価値が高いとされています。
時計の世界では、トゥールビヨンは“コンプリケーション”として知られており、これは高度な技術を用いて製作された複雑な機構の時計であることを示します。
現代においてもトゥールビヨンの修理は難易度が高い
現代においても、高級時計の象徴として存在感を示すトゥールビヨン。トゥールビヨンは、その独自の美しさと複雑さから、依然として時計愛好家にとって魅力的な存在として続いています。
ただし、トゥールビヨンの修理やメンテナンスは、極めて高い専門知識が要求される作業です。トゥールビヨンのメンテナンスをご希望の際は、修理に対応している店舗にご依頼ください。
現在、カナルクラブではトゥールビヨンの修理受付を停止しておりますが、腕時計に関するお困りごとがございましたらどうぞご相談ください。専門知識を持った私たちが丁寧にお手伝いいたします。
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こちらのコラムでは主に初めてオーバーホールする方に向けてぜひ知っておいていただきたいことを書いています。
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