【 時計の防水機能の限界】知られざる防水性の維持方法

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高級時計の防水機能は、日常生活やスポーツシーンで大いに役立ちます。しかし、時が経つにつれ、防水性は自然と低下し、必要なメンテナンスが行われていない場合、水の影響を受けやすくなります。本コラムでは、時計の防水機能がどのように劣化するか、その維持方法、そして防水性を守るためのメンテナンスの重要性について詳しく解説します。

防水機能の限界とは?

時計に備わる防水機能は、裏蓋の構造、リューズやパッキンといった部品によって支えられています。しかし、これらの部品は経年劣化が避けられず、長期間の使用や温度変化、紫外線などの外的要因が影響で機能が低下していきます。例えば、シリコン製やゴム製のパッキンは、時間の経過とともに硬化し、ひび割れや収縮を引き起こします。この結果、時計のケースや裏蓋から水が侵入しやすくなります。

また、防水性を示す”防水表記”(3気圧、5気圧、10気圧など)も、最初の状態では機能しますが、メンテナンスを怠るとその性能が保てなくなります。腕時計を新しく手に入れる際は、防水表記が永久的な数値ではないことを頭に入れておきましょう。

よくある防水トラブルと原因

高級時計でも、日常生活の中で防水機能が損なわれることは珍しくありません。以下はよくある防水トラブルとその原因です。

-湿気や曇り:時計の内部に湿気が入り込み、文字盤が曇ることがあります。これは、冷暖房の効いた部屋から屋外に出たり、急激な温度変化が原因です。特に防水機能が劣化している場合、外気の湿気が入り込みやすく、長時間放置すると内部パーツに錆が発生し、ムーブメントが故障するリスクが高まります。

-ケースやリューズからの水の侵入:リューズや裏蓋のシール部分は、時計の防水性を保つ重要なパーツですが、経年劣化や頻繁なリューズ操作による摩耗が原因で防水性が低下します。特にリューズ部分は手動で頻繁に操作されるため、摩耗やシールの劣化が進みやすく、水の侵入リスクが高まります。時計を定期的にメンテナンスし、シールやパッキンの交換を行うことで、防水性能を維持することができます。

-サウナや熱い風呂での使用:腕時計は温度変化に敏感です。サウナや熱い風呂などの高温環境では、防水シールやパッキンが急激に収縮・膨張し、破損や変形が起こることがあります。特にゴム製のパッキンは熱に弱く、長時間の高温環境で使用すると、劣化が加速し、水分が時計内部に侵入しやすくなります。サウナや温泉などでの使用は避け、防水機能を維持しましょう。

防水表記に合わせた使用をする

時計に表示されている防水性能は、使用する環境に応じて適切に判断することが大切です。以下は、一般的な防水性能レベルとその使用範囲です。

3気圧防水(30メートル防水)

3気圧防水は日常生活での軽い水滴や汗、雨に耐えるための機能です。具体的には、洗顔時に手が濡れる程度や、突然の雨に遭遇した際に時計が濡れる程度であれば問題ありません。しかし、時計を水中に長時間浸したり、水仕事を行う際、シャワーや入浴の際には使用を避けましょう。水圧や温度変化によりパッキンが劣化しやすく、水が内部に侵入するリスクが高まるため、これらの状況では時計を外すのが賢明です。

5気圧防水(50メートル防水)

5気圧防水は、日常的な水仕事に対応する程度の防水機能です。食器洗いや農作業など、手が濡れる状況でも比較的安心して使用できます。ただし、水泳やシャワーには不向きで、水圧が加わると防水性能が保たれない場合があります。また、高圧の水(シャワーやホースなど)が直接時計にかかる場合も、内部に水が侵入する可能性があるため避けたほうがよいでしょう。

10気圧防水(100メートル防水)

10気圧防水は、浅い海、プールでの着用に対応しています。水深の浅い場所であれば、時計に水がかかっても安心ですが、強い圧力がかかるような場合は外しましょう。また、リューズやボタンが濡れた状態で操作すると水が内部に侵入することがあるため、注意が必要です。

20気圧防水(200メートル防水)

このレベルでは、スキューバダイビングや本格的なウォータースポーツに対応しています。20気圧防水時計は、空気ボンベを使ったダイビングや水上での激しい活動でも安心して使用できますが、飽和潜水や深海潜水には不向きです。また、海水を浴びた後は、必ず真水で時計を洗浄し、海水による腐食や汚れを防ぐことが大切です。

防水性を保つためのメンテナンス方法

防水性を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要です。防水性能を長く保つためのメンテナンス方法を紹介します。

■ 防水テスト
防水性を長く維持するためには、定期的に防水テストを受けることが重要です。防水機能は目に見える劣化ではなく、内部のシールやパッキンが自然に劣化することが多いため、特にダイバーズウォッチや高い防水性能を持つ時計では、1年に1度の防水テストを受けることが推奨されます。専門店での防水テストでは、時計の全体的な状態を確認し、防水性能が確実に維持されているかをチェックします。

■ パッキンの交換
パッキンは時計の防水性能を支える重要な消耗部品です。水分の侵入を防ぐゴム製のパッキンは、経年劣化や使用環境によって硬化したり、ひび割れが生じることがあります。これが防水性能の低下につながります。一般的に2〜3年ごとにオーバーホール時にパッキンを交換することで、防水機能を長期間維持することができます。カナルクラブでは、純正部品を使用して確実な交換作業を行っています。

■ リューズや裏蓋の点検
リューズや裏蓋のシールは、防水性能を保つ上で非常に重要なパーツです。リューズは時計の操作の際に頻繁に動かされる部分であり、摩耗や緩みによって防水性が損なわれやすい場所でもあります。定期的に点検を行い、リューズや裏蓋の緩みがあればすぐに調整や交換を行うことが大切です。裏蓋のシールも同様に、年に1度はチェックすることが理想です。これにより、予期せぬ水の侵入を防ぐことができます。

カナルクラブでは、防水時計のメンテナンスや修理に特化したサービスを提供しています。防水テストやパッキンの交換をはじめ、防水性能を保つためのオーバーホールや部品交換も行っています。特にダイバーズウォッチなど高い防水性能を求められる時計には、定期的な防水検査が不可欠です。大切な時計を長く愛用するために、ぜひカナルクラブでのメンテナンスをご利用ください。

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