ジェラルド ジェンタとは?

ジェラルド ジェンタという時計デザイナーをご存知でしょうか?

・パテックフィリップのノーチラス

・オーデマピゲのロイヤルオーク

・IWC インジェニア

・オメガ コンステレーション

などの大ヒットを飛ばしたデザイナーです。

しっかりした質感があり、エレガントでもっとも IWC インジェニアにはあまりエレガントさは感じませんが、それはその当時のIWCの方向性に合わせたからでしょう。ジェンタのデザインはどちらかというと斬新であるものの、奇をてらっているわけではない。つまり高級ブランド向きのデザインと言えます。しかし、ジェンタの作品でもう一つ印象深いものがあります。

 

ジェラルド ジェンタ 独自ブランドを立ち上げる

後にジェンタは“ジェラルド ジェンタ”と言う独自のブランドを立ち上げました。そのブランドでは自由にデザイン、販売したいと考えたのでしょう。その中の一つに18金のミッキーマウス時計があります。(“ジェラルド ジェンタ”の創立は1969年らしいのですが、これは私の想像より約10年くらい前です。案外古くからあったですね。)ジェンタは独立してからもたくさんの作品を作っています。その中でも今回取り上げた18金のミッキーマウスはポップアートの流れがまだ盛んな時代に発表されたこともありかなりの人気を博したようです。高級時計らしくない高級時計というイメージでしょうか。当時のアンディーウォーホールの毛沢東やマリリンモンローなどのプリントみたいにアートというにはかなりカジュアルな感じです。

*こちらはジェラルド ジェンタの時計ではありませんが、イメージとして使用しています。

同じジェンタの作品でも、オーデマピゲのロイヤルオークやパテックフィリップのノーチラスなどが荘厳な交響曲のようなクラシック音楽だとすると。K18ミッキーマウスはポップでカジュアルな音楽に例えられるでしょう。しかし、私が最初その時計を知ったときはミッキーマウスと18金は釣り合わないと思いました。

 

 

初めて現物を見たとき

当時弊社の顧客だった貴金属店で、この時計をかなりの本数販売したそうです。18金のケースにミッキーマウスの図柄がプリントされた文字盤、革ベルトという成り立ちです。初めて現物を見たときにはカタログで見たときとは裏腹に、「奇抜なアイデアをうまくまとめてくるものだなあ」と感じました。多分、ケースの形状が18金時計に合っているミッキーマウスの文字盤の出来が良い、つまりプリントの質感がしっかりしている、などが理由でしょう。つまり高級時計として、押さえるところは押さえてあります。

 

発表される時代が今とは違い過ぎる

2021年、今現在、初めてこの時計を見た人はこの時計に興味を持つでしょうか?おそらくあの1980年代よりそういう方は少ないと思います。それはそれぞれの時代の大きな違いによるものでしょう。当時それを購入した方は、今もう一度手に取ってみると、1980年代、あの時代のことがありありと思いだされるかもしれません。あの時計はその時代特有の表現(体現)だったからです。そしてあの時代は今よりも気楽に生きられる時代でもありました。

 

ここにもある高級時計の制約

以前にも書きましたが、高級時計にはやはりいろいろな意味で製作時の制約があります。高級時計を高級時計として存在させている制約=条件です。K18ミッキーマウス時計はその制約を、確かに破ったと思います。そして、もしもK18ミッキーマウスを久しぶりに手に取ることがあればどのような感じがするでしょう。1980年代から90年代初頭の、あの時代感覚が蘇ってくるかもしれません。時計のデザインはその時代を反映しています。その時代に生きているときには感じなかった感覚も現れるかもしれません。これも時計について言えば、長い期間所有し続けることによってはじめて得られる価値だと思います。どんな時代でも、その時代を表している時計は、例え今の流行りとは違っていても価値がある。それも時計を長く持ち続けることの価値の一つと言えるのではないでしょうか。

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