以前、ロレックスのバブルバックのメンテナンス依頼がありました。バブルバックはもう部品がほとんど入手できません。もちろん部品に問題が無ければカナルクラブではオーバーホール、パッキン交換、調整などでクリアーできるはずです。金額にして¥40,000-位でしょうか?
しかし、現実にはなかなかそうはいかず、やはりいくつもの部品の交換が必要な状態でした。カナルクラブは古い時計の部品もかなり入手できるのですが、やはりバブルバックはかなり難しいです。
「バブルバックの時計修理はできないのか!?」というと、そんなことは無く、内装部品ですと一応部品修正や部品作成によって、直すことは可能です。こういった修理は、勿論、カナルクラブの一般作業ラインとは異なります。部品が入手できず、メーカーでも対応不可の直せない時計用のラインです。しかし、この修理ラインで直すと相当高額修理になってしまいます。その時お預かりしたバブルバックだと内部のダメージが大きかったので、当然のように10万円を超えました。
そしてもう一つ問題があります。
バブルバックはそれほど時計価格が上がっていないということです。デイトナ・サブマリーナ・シードゥエラー・エクスプローラーなどに比べればということですが。ということで、そのお金のかかる技術をバブルバックに使うチャンスがなかなかありません。修理代が時計の価格に見合わないと感じるオーナ―の方もいらっしゃるからです。もちろん社外部品は使いません。(バブルバックの社外部品があるかどうかもわかりませんが・・・)
しかしネックになっているのは、ロレックスバブルバックの販売価格です。現実の市場価格は思ったよりも安く、20万円台くらいからのようです。バブルバックは高額な値段が付いている場合、ユニークダイアルなどの希少性の高いものです。また金ムクも当然値が張ります。金の価格が高騰していますからね。ただ、一般的なデザイン、材質の場合ですとバブルバックの魅力に比べ価格が低いと感じています。あるいは他が高すぎる?・・・・。
もし、バブルバックもその価値を落とさない修理が当たり前のようにできるようになると販売店も積極的に扱うようになり(今よりさらにという意味です)価格が上昇していくでしょう。価格上昇・価値の上昇というのは社会がどのようにその時計を判断しているかということです。その判断の中には販売業者にとってメンテナンスが楽かどうかという点も含まれます。その点についてはこれから時計修理技術が、AI、3Dプリンタなどの発達によって格段に伸びてくるというのが予想できます。そこに期待しましょう。そうならないと絶滅危惧種であるバブルバックを救えるチャンスをつくるのは難しいと思います。